三菱自動車工業株式会社様 導入事例
老朽化した倉庫管理システムを刷新、
クラウド移行と同時に高可用性を担保
三菱自動車工業は、自動車の部品や用品を管理する「倉庫管理システム」を、2020年にクラウド化した新しいシステムに刷新している。オンプレミスのサーバーで運用していた従来のシステムは、ハードウエアの老朽化によりトラブルが増加する傾向にあり、その上トラブル発生時の対応時間が長くかかり業務への影響が少なからず出ていたことが要因だ。
三菱自動車工業 グローバルIT本部 ビジネスIT部 マネージャーの坪島寛政氏は「従来のシステムは2012年に本格稼働を始めたハードウエアベースのものです。ハードウエアの老朽化によりトラブルが増えてきたこともあり、システムを止めないためにも新しいシステムの導入が求められました」と背景を語る。
倉庫管理システムが扱っているデータは、自動車を構成する「部品」と、ディーラーが販売するフロアマットやルーフキャリア、様々なカーアクセサリーなどの「用品」。部品・用品の入荷管理、国内外からのディーラーからの注文に対する出荷管理、倉庫内での在庫管理、配置管理を担っている。部品倉庫の要といえるシステムだ。倉庫管理システムが止まると、部品・用品の供給が遅れ、最終的には自動車のユーザーに直接の影響が出てしまう。
同社 グローバルIT本部 ビジネスIT部主任の岩﨑諭史氏は、「三菱自動車工業には国内に6拠点の部品、用品を取り扱う部品倉庫があります。このうち、3拠点のシステムが今回の更新の対象になりました。全社の方針で、新しくシステムを構築する際には、オンプレミスからクラウドへ移行する必要がありました」と語る。高可用性を保ちながら、クラウド上に新しいシステムを構築するチャレンジが、始まった。
止まっては困るシステムをクラウドサービスで実現するには
既存の倉庫管理システムの冗長構成は、オンプレミスで導入したサーバーのメーカー独自の冗長化システムに頼っていた。いわゆるハードウエアの冗長化であり、トラブルが起きた際にはハードウエアの切り替えのために一旦システムを止める必要があった。その切り替えには2時間から4時間と長い時間が必要だった。切り替えに長時間を要することから、切り替えの判断も慎重にならざるを得なかった。
倉庫の在庫を管理するシステムで、高い可用性を求められるのには理由がある。それは物流との関連である。最もタイトなのが倉庫発トラックの最終便に間に合うかどうかという、受付終了間際の対応だ。受付終了時間までに注文システムに入力した部品や用品は、翌日にはディーラーなどに届けなくてはならない。例えば、夕刻に各地向けのトラックのうちで最も早い便が17時には倉庫を出発とする。在庫から品物を集めて詰め込む時間があるため、便の20分前、すなわち16時40分までに倉庫管理システムにデータが入力されていないと、翌日の到着に間に合わないケースが出てくるのだ。「例に合わせれば、16時29分に投入されたデータに対しては、16時40分までのデータ反映が必要です。システムにトラブルがあったとしても、10分以内には復旧していることが求められます」(岩﨑氏)。
2018年に倉庫管理システムの刷新のプロジェクトはスタートし、こうした要件を提示して、アウトソース先の事業者にシステムの提案を求めていった。
最初は不思議なものを見るような印象だった「ソフトでHAを実現」
倉庫管理システムをクラウドサービス上に移行するにあたって、可用性を担保するためにアウトソース先の事業者が提示してきたのが、サイオステクノロジーのHA(高可用性)クラスターソフトウエア「LifeKeeper」だった。アウトソース先の事業者は、複数のシステムの比較提案ではなく、LifeKeeper一択の提案をしてきた。
ところが坪島氏と岩﨑氏にとっては、LifeKeeperは初めて目にするソリューションだった。「それまで、HA構成といえばハードウエアがメインだと経験から理解していました。それをソフトウエアで実現しているというので『これはなんだろう?』と不思議な物体を見るような第一印象でした」(岩﨑氏)。すぐに納得はいかなかったものの、その後にアウトソース先の事業者から紹介されてサイオステクノロジーの担当者に説明を受けた。突っ込んだ質問をしていったところ、的確な答えが得られてLifeKeeperへの信頼を高めていった。
LifeKeeperの導入に踏み切る際に、もう1つ決め手になったものがオプションサービスの「LifeKeeper導入サービス」の存在だった。LifeKeeperはユーザー個々の要件に合わせて専用スクリプト(Generic ARK、ARK:Application Recovery Kit)を作成して対応する機能がある。一方で、これをユーザー企業が作成して運用するのは必ずしも簡単とは言えない。サイオステクノロジーは、専用スクリプトの開発を含めた導入サポートとしてLifeKeeper導入サービスを用意していて、三菱自動車工業ではこのオプションを利用することにした。「我々の要件にあわせて、サイオステクノロジーでカスタマイズや開発をしてもらえましたし、様々な要求に対しても“システム的に無理”と言わずに対応してもらえました」(岩﨑氏)と柔軟な対応を評価する。
LifeKeeperによって、注文システムおよびERPと倉庫管理システムのデータベースの間の高可用性を保つ仕組みを持つ新しい倉庫管理システムは、2020年1月に1拠点目で運用を開始した。2拠点目が同年5月、3拠点目は同年8月に新システムに切り替わる予定という。
今回導入した高可用性システムのイメージ図
瞬時に待機系に切り替えてくれる効果を強く実感
1拠点目で稼働が始まってから取材時点で約半年の運用だが、その間にも障害などがすでに複数回起きている。しかし、「トラブルが起きても、運用系から待機系に瞬時に切り替えてくれるので、ユーザーが気づくようなインタフェースの遅れはなく運用を継続することができ、恩恵に預かっています」と坪島氏は語る。
グローバルIT本部のマネージャーとしてシステムを統括統括している坪島氏の元には、これまで夜間でもトラブルのアラートが上がってきていて、対応の判断に苦慮していた。LifeKeeperを導入した現状でも夜間にコールが来る体制にはしているが、現在の内容は自動的に待機系に切り替わったことの連絡がほとんどとなり、管理者の負担の軽減にもつながっている。今後は夜間対応をアウトソース先に任せることで、平日連絡だけでも運用できるのではないかと見ている。
LifeKeeperによって高可用性を確保しながら倉庫管理システムをクラウド化したことのメリットは、2020年の新型コロナウイルスへの対応でも現れた。「コロナ禍でもリモートで対応ができました。もしクラウド化していない旧システムのままだったら出社しないと対応できなかったでしょう」と岩﨑氏は安堵の表情を見せる。
システムのクラウド化を進める三菱自動車工業だが、現状ではまだメインフレームを使ったシステムも多く残っているという。「ホストシステムからの脱却を考えたとき、高可用性が求められる基幹システムをクラウド化するには、LifeKeeperのようなHAクラスターソフトを導入していく必要があるでしょう。今後、会社にはリコメンドしていきたいと思います」(坪島氏)。当初、「これはなんだろう?」と感じるほどだったHAクラスターソフトのLifeKeeperだが、倉庫管理システムでの評価を通じて、三菱自動車工業のシステムに浸透していく可能性が見えてきている。
三菱自動車工業株式会社様
業種 | 製造業 |
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導入環境 | クラウド |
導入システム | 倉庫管理システム |
- 所在地
- 本社:東京都港区芝浦三丁目1番21号
- 設立日
- 1970年4月22日
- 従業員数
- 14,407名(2019年末現在)