セイコーエプソン株式会社様 導入事例
クラウドHA構成とSingle Server Protectionを組み合わせ障害対応の自動化を実現
一部冗長化できていない部分にも障害時の自動復旧が可能となり、サービス基盤全体で可用性を向上
セイコーエプソン株式会社様が、世界中のプリンターユーザーに提供しているモバイル・クラウドサービス「Epson Connect」。その基盤には、可用性向上やコスト削減が求められており、これまでに大半のサーバーをクラウド化してきたほか、サイオステクノロジー(以下、サイオス)のHAクラスターソフトウェア「LifeKeeper」も用いられてきました。2017年には、システム構成の都合から冗長化できていなかった部分にサイオスの「Single Server Protection」(以下、SSP)を新たに採用。障害時の自動復帰を可能とし、さらなる可用性向上を図っています。
プリンターの世界を広げるクラウドサービス「Epson Connect」
セイコーエプソン株式会社様のプリンティングソリューションズ事業部では、プリンターユーザーに向けて、モバイル・クラウドサービス「Epson Connect」を全世界で提供しています。このサービスは対応製品の利用者に無償で提供されており、PCやスマートフォン、タブレット端末などから、インターネットを通じてプリンターや複合機の様々な機能を利用できるようにするものです。
可用性とコストを考慮し「クラウド+LifeKeeper」を以前から活用
P企画設計部 主事の持田晃氏は、「ビジネス向けプリンター市場においては、Epson Connectが差別化のための要素となっており、『Epson Connectがあるからエプソンのプリンターを購入する』というケースも少なくありません。そのため、Epson Connectのサービス品質向上に心して取り組んでいます」と話します。
サービス品質の中でも、可用性は常に大きな命題です。海外の利用者が多いこともあり、24時間365日止めることができません。一方で、コストも大きな課題の一つです。Epson Connectは無償提供のサービスのため、可能な限りコストを抑えていく必要があります。
可用性とコスト、その両方の改善を図るべく、Epson Connectのシステム基盤を構成するサーバーは大半がクラウド上で運用されていました。さらに2014年からはLifeKeeperによる冗長化も活用し、ダウンタイム短縮や障害時の作業負荷軽減を実現してきました。
特殊なソフトウェアを利用しているため冗長化できていない部分が課題
しかし、これまでは構成上の都合から、全てをクラウド化できていませんでした。プリンターとの接続情報を管理するサーバーが、クラウド化も冗長化もできていなかったのです。
P企画設計部 主任の八代立氏は、その事情を次のように説明します。
「このサーバーには、一般的なオープンソース・ソフトウェア(OSS)のDBソフトウェアではなく、特殊なDBソフトウェアを採用していたため、クラウド化も冗長化もできずに運用していました。ここが唯一のSPOF(Single Point of Failure)として残っていたのです」このサーバーは、幸い一度もトラブルが生じていませんが、SPOFの存在はやはり気掛かりです。「万が一トラブルが生じた場合には、人手でのリカバリーが必要となるため、ダウンタイムが長引く懸念がありました。トラブルに気付くまでのタイムラグまで含めると半日や1日の停止もあり得えます」と、P企画設計部 主任の阿部卓弥氏は言います。
冗長化できないサーバーの可用性向上策としてSSPを採用
このサーバーの可用性向上策として、2つの手法が実施されました。まず一つが、サーバーをホスティング環境からクラウド上に移行し、クラウドサービスのHA機能を利用することで、物理サーバーの故障に対する可用性を向上させること。もう一つが、OSやDBソフトウェアの障害を検知して自動的に再起動する仕組みです。
2016年2月、Epson Connectのシステム基盤全体を別のクラウドサービス上に移行するのに伴い、ホスティング環境に残っていたDBサーバーもクラウド化することとなりました。これにより、仮想サーバー障害に対する自動フェイルオーバーが可能となります。
このとき、DBソフトウェアの障害への対策として採用されたのがSSPです。「冗長化プロダクトはLifeKeeper以外にもいくつかありますが、SSPのように冗長化でなく自動リカバリーを行う製品は他にありません。しかもSSPは20万円を下回る費用で採用しやすい上に、データの同期が不要なのでアーキテクチャ的な面からも導入が容易です。クラウドのHA機能を組み合わせれば可用性レベルをかなり高められるため導入を決めました」(八代氏)
導入に先立ち、パートナーである富士通の協力を得て動作試験も実施、きちんとリカバリーするよう事前に調整が行われました。
SPOFは皆無になり、コストも2割削減を達成 クラウド移行、運用自動化、コスト削減を進める
こうして2017年5月、Epson ConnectはSSPを加えた上で新たなクラウド環境へ全面移行し、本番稼働を開始しました。「これにより、障害時の人手でのリカバリーを全て自動化できました。胸を張って、SPOFを皆無にすることができたと言えます」と、八代氏は評価しています。
可用性向上と同時に、全面クラウド化によって約2割のコスト削減も達成しました。ホスティングを廃止して全面的にクラウド化したことによる効果に加え、クラウドのHA機能+SSPによるリカバリー対応の自動化で運用も効率化されたのです。富樫氏は、「常々、『手順が決まっているなら障害対応は人手を介さず自動でできるようにすべき』と言っています。運用の自動化は今後もさらに進めていきます」と語っています。その自動化を進める上で、SSPにはさらなる出番がありそうだと八代氏は言います。
「弊社としてはサービスレベルの向上とコスト削減を実現するべく、クラウドサービスにシステムの移行を進めています。コストの都合で冗長化できないような部分もSSPで可用性を向上できます。例えば監視やログ、ジョブ管理といった“脇役”のサーバーはコストをかけづらいものですが、そういうところにSSPがフィットするでしょう。特にクラウドとSSPの組み合わせも、とても良いと感じています。高いサービスレベルのクラウドインフラとアプリケーションの可用性を高めるSSPを利用することで、高いレベルのサービスを提供することができると考えています」
セイコーエプソン株式会社様
業種 | 製造業 |
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導入環境 | クラウド |
導入システム | モバイル・クラウドサービス「Epson Connect」 |