株式会社クレディセゾン様 導入事例

止まると顧客コンタクトに支障が生じる管理システム クラウド環境(AWS)移行で、マルチAZクラスター構成を採用し高可用性を実現

「セゾンカード」で知られるクレジットカードを中心としたペイメント事業、リースや信用保証などのファイナンス事業、さらにグローバル事業と、幅広く金融をコアとした総合生活サービスを展開するクレディセゾン。その1つの柱であるペイメント事業で、クレジットカードの基幹システム更改に続いて、周辺システムの更改プロジェクトが始まったのが2019年のことだった。

クレディセゾン CSDX推進部長・基幹システム部長 牧 純一氏

クレディセゾンのシステム全体を統括するCSDX推進部長と基幹システム部長を兼任する牧 純一氏は、「CSDX推進部では、6部門で様々なシステムを構築、運用しています。2018年に基幹システム更改を完遂し、その後は、順次、周辺システム更改の対応をしています。その中の1つにペイメント事業の重要な業務をサポートする延滞顧客管理システムがあります」と語る。

延滞顧客管理システムのクラウド移行で可用性の維持が課題に

延滞顧客管理システムの更改は、既存システムを稼働させていたハードウエアのEOL(End of Life)に伴うサポート終了に対応することがきっかけだった。基幹システム部 債権グループ 課長の田内 紀明氏は、「オンプレミスからクラウドへ移行することが前提で、AWS上に新システムを構築することになりました。その上で従来通りのシステムの可用性を担保することが求められました」と説明する。

ここで、クレディセゾンの延滞顧客管理システムについて少し説明が必要だろう。田内氏は、「延滞顧客管理システムでは、初期延滞顧客から中長期延滞顧客、貸倒償却した顧客までを一貫して管理しています。電話や文書によるアプローチなどの交渉記録の管理、分割返済のシミュレーション、裁判所や弁護士などに提出する文書の作成まで、債権管理のための機能を網羅したシステムです」と語る。その管理対象は、クレディセゾンが直接発行するクレジットカードだけでなく、資本参加するグループ会社の顧客にも広がる。

牧氏は「クレジットカード利用のほとんどのお客様は、期日通りに登録口座から引き落としさせていただけます。ただ、たまたま残高が不足していて口座にお金を用意していただけないようなケースもあります。そうした場合に、いつまでにお支払をお願いしますといったご連絡をするのですが、きめ細やかに状況を見ながら交渉するための基盤になるのが延滞顧客管理システムです。このシステムが止まってしまうと、必要なタイミングで取るべきアクションが起こせなくなったり、お客様からの問い合わせに対して状況が把握できなかったりといったことが起きてしまいます」と、システムに可用性が求められる理由を説明する。ある条件の下で架電が禁じられる法的な制約もあり、システムが稼働していないと「お客様とのコンタクトに支障が出てしまう」(田内氏)ということもある。

クレディセゾン基幹システム部 債権グループ課長 田内 紀明氏

延滞顧客管理システムでは、既存システム時代から高い可用性を求めてきた。「24時間365日稼働しているシステムで、日中はクレディセゾンの従業員が顧客対応に利用し、夜間は基幹システムなどとのデータ連携処理が稼働しています。システムが止まると業務ができなくなるので、いち早く復旧させる必要があります」(田内氏)。

特に、夜間にシステムが停止してしまった場合、朝になって止まっている状況から原因を究明して復旧させるとなると、半日といったダウンタイムが生じてしまう。AWS上にシステムを移行しても、自動的に復旧できる仕組みが求められた。

システムのデータ転送を司るHULFTをマルチAZでクラスター構成へ

延滞顧客管理システムの実際の構築、運用は、クレディセゾンの情報システムのインテグレーションを手掛けるセゾンテクノロジーが担ってきた。セゾンテクノロジー DI本部 データエンジニアリング統括部 クラウドプラットフォーム部 部長の日野 洋氏は、「延滞顧客管理システムと基幹システムのデータ連携をするために、ファイル転送ミドルウェアとして弊社が開発したHULFTを使ってきました。システムのプラットフォームに依存せずに確実にデータ転送できる仕組みとして選定したものです。今回、オンプレミスからAWSにシステムを移行したときに、HULFTによるデータ転送の可用性を担保する仕組みが必要になりました」と語る。

「既存システムはUNIX対応のハードウエアとOS、ソフトウエア製品としてのクラスター製品を組み合わせて可用性を担保していました。AWS化するにあたって、新たにAWS対応のクラスターソフトを選定する必要がありました」(日野氏)。一方、延滞顧客管理システムそのものは、複数のデータセンターで構成するAWSのアベイラビリティーゾーン(AZ)を、さらに複数組み合わせて使うマルチAZ構成で可用性を担保する。データ転送を担うHULFTについても、マルチAZ構成に対応しながら可用性を保つ必要があった。

AWS対応の製品を調べていくと、クレディセゾンの周辺システムの可用性を担保するために、サイオステクノロジーのクラスターソフト「LifeKeeper」を採用している事例があった。さらに調べると、LifeKeeperはAWSのマルチAZ環境に対応していることがわかった。その上LifeKeeperは、クラウド環境に対してクラスター化の機能を10数年にわたって提供していて、信頼性が高いことも導入を後押しした。

セゾンテクノロジー DI本部 データエンジニアリング統括部 クラウドプラットフォーム部 部長 日野 洋氏

クレディセゾンで運用実績があるLifeKeeperならば、他の製品を新たに運用することによるリスクを抑えることもできる。

クラウドプラットフォーム部でプロジェクトのシステム構築に関わった石丸 司氏は、「AWSでクラスター構成を実現する手法については、探してもあまり情報がありませんでした。そんな中でLifeKeeperの資料を取り寄せたとき、マルチAZによるネットワーク構成図が掲載されていて、『これだ!』と思いました」と語る。さらに求める機能の多くはLifeKeeperが提供するApplication Recovery Kits(ARK)で構築できた。一方でその他の部分については「自前で処理を組みたいところが、柔軟にカスタマイズできて使いやすかったです」(石丸氏)。

【システム構成イメージ図】

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本番環境でも想定通りのリカバリーが実現、クラウド化推進を支えるツールに

2019年に延滞顧客管理システム更改の検討が始まり、LifeKeeperの導入を決定して開発が始まったのが2022年1月のこと。2023年10月に更改したシステムの稼働が始まり、取材時点で約1年が経過していた。

石丸氏は、LifeKeeper導入時に「サイオステクノロジーと導入協力会社に随時相談していました。迅速に回答があり、プロジェクトも大きな遅延なく進みました」と当時を振り返る。プロジェクトリーダーを務めたDI本部 データエンジニアリング統括部 データエンジニアリング部 課長の諏訪 聡氏も「既存システムと同様の仕組みが提供できるように実装テストは慎重に行い、当初から設定を変更するような場面もありましたが、最終的には問題なく構築できました。

セゾンテクノロジー DI本部 データエンジニアリング統括部 クラウドプラットフォーム部 石丸 司氏

LifeKeeper周りで大きく苦労したという印象はなく、スムーズに進んだと感じています」と評価する。 オンプレミスからクラウドへとアーキテクチャが大きく変わる中で、「既存のシステムとほぼ同等なことができる機能実装を実現できました」(日野氏)。

基本的に順調に稼働している新システムだが、トラブルも生じたことがある。諏訪氏は「最近、2系統のうち1系統に問題が生じてフェイルオーバーすることがありました。発生は夜間でしたが、切り替わりが自動で即座に行われ、ステータス確認後に問題なく業務が継続できました。トラブルは起こらないに越したことはありませんが、今回の経験からテストで検証した通りにLifeKeeperが本番で稼働することを確認できました」と語る。このトラブルについても「LifeKeeperで冗長化していなければ、延滞顧客管理システムが止まっていたと思います」(石丸氏)という。LifeKeeperのようなクラスター製品は、安全を担保するための仕組みであり、それが実際に実現できたことで、セゾンテクノロジーからは顧客であるクレディセゾンに安心材料を提供できたとの評価である。

クレディセゾンとしても、「トラブルで切り替わったと聞いてびっくりしましたが、夜間のうちに自動的に切り替わっていて翌日は問題なく業務が始められました。改めて信頼できるシステムを構築できていることがわかり、安心しました」(田内氏)と評価する。

こうしたLifeKeeperの活用についてセゾンテクノロジーとしては、「当社にとってお客様であるクレディセゾンは、クラウドを活用していく企業戦略を持っています。セゾンテクノロジーとしてもクラウドネイティブなシステム構成にしていくべきだと考えています。ただし、業務システムの中でデータベースやパッケージ製品がすべてクラウドに移行できるとは限らず、延滞顧客管理システムのように周辺システムにLifeKeeperなどを導入することで安心安全を担保していく必要性があると考えています」(日野氏)と見る。

同様にクレディセゾンとしても「まだクラウド化できていない仕組みがあり、クラウド化と同時に可用性を担保する仕組みを作らなければなりません。その際にLifeKeeperは1つの選考基準になると思います。延滞顧客管理システムだけでなく、架電システムなど周辺システムのクラウド化が今後も計画されていて、LifeKeeperの活用が考えられるでしょう」(田内氏)。

セゾンテクノロジー DI本部 データエンジニアリング統括部 データエンジニアリング部 課長 諏訪 聡氏

クレディセゾンの牧氏は、「システム更改や業務改善をしながら、クレディセゾンが成長していくための機能を追加しているところです。まだ満足はしていません。そうした中で、システムが安全に稼働することは土台です。LifeKeeperの採用で問題なく可用性を担保して運用ができているので、製品選定も含めてうまくいったと感じています」と語る。今後もクレディセゾンの成長を支えるために、LifeKeeperが貢献する範囲が広がる可能性は高そうだ。

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株式会社クレディセゾン様

業種 金融・保険業
導入環境 クラウド(AWS)
導入システム 延滞顧客管理システム
所在地
東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60・52F
設立日
1951年5月1日
従業員数
3,764名
ホームページ
https://corporate.saisoncard.co.jp/company/about_cs/