イオンアイビス株式会社様 導入事例

会計システムのクラウド化で可用性担保へ、実績やサポートを含めた総合力でツール選定

 総合スーパーやスーパーマーケットなどの小売事業を主軸にヘルス&ウエルネス事業総合金融事業、ディベロッパー事業、サービス・専門店事業など、幅広い事業を手掛けるイオングループ。約300の企業で構成されるイオングループの情報システムを担うIT機能会社がイオンアイビスである。イオンアイビス ITソリューション開発本部 コーポレートシステム統括部 会計システム部(当時)の石村寧宏氏は、「イオンアイビスは、イオングループ内の各事業会社に対して、ITサービスを提供しています」と説明する。

 イオングループは規模が大きく、事業会社の数も多い。それだけにITサービスに対する各事業会社の考え方は多様で、グループとして各社の特色を尊重する方針が根底にある。「私たちが提供する会計システムは、GMSを展開するイオンリテール、ディベロッパー事業のイオンタウン、機能会社であるイオントップバリュなど、多くの事業会社で共通システムとして使われています。一方で、グループ内の全社が利用しているわけではありませんので、各社個別のシステムと共通システムの間のデータ連携をする機能もイオンアイビスが提供しています」(石村氏)。

 そのような複雑な構成の会計システムに、オンプレミスからクラウドへの移行の波が押し寄せてきた。プロジェクトとして具体化したのは2021年のこと。イオンアイビスが取り扱う他のシステムが採用していた、Microsoft Azureを基盤とした移行である。石村氏は会計システムAzure移管プロジェクトのプロジェクトマネージャーとして、基盤の移行に携わった。

クラウド化の流れの中で会計システムもAzureへ移行

 イオングループがクラウド化を推進するようになった背景には、巨大流通グループの情報システムをオンプレミスで維持することが困難になってきたことが挙げられる。クラウド化することで、オンプレミスでついて回るハードウエアの老朽化、故障の問題や、システムが求める規模や性能に対する物理機器の制約などからの脱却を推進する。

 「災害時の対策でディザスタリカバリをしようと思っても、オンプレミスだと東日本と西日本に同規模のシステムを構築しなければなりませんが、クラウドならば柔軟な対応が可能です」(石村氏)。会計システムのAzure移行が具体化した背景を石村氏は、「会計システムでもパワーを要するタイミングもあれば、パワーを使わない時期もあります。クラウドで柔軟なリソースコントロールができることで、恩恵を得られると考えています」と説明する。

イオンアイビス ITソリューション開発本部
コーポレートシステム統括部 会計システム部 石村寧宏氏

 イオングループでは、会計システムにも複数のサブシステムがある。プロジェクトでは、買掛支払、管理会計、財務会計など複数のシステムをAzureに移行することになった。「会計システムは、売上の結果を集計して、仕入先への支払い、請求など、会社の収入支出にかかわるデータを扱います。グループとして重要なシステムであり、可用性の担保は大きな課題でした。特に、会計システムはグループ内でも高レベルの統制が求められるシステムでもあり、扱う情報が会社運営に影響するシステムでもあるため、システム停止によりユーザに迷惑をかけることはできず、冗長性、可用性の担保が高いレベルで求められました」(石村氏)。

Azureの可用性担保で認知度や実績の高いDataKeeperを選定

 会計システムのAzure移行のプロジェクトは、2022年から要件定義や基本設計などに取り組んだ。同時に、Azureに切り替えた後にデータ連携ツールや帳票ツールも内包する会計システムの冗長性、可用性を担保するための技術やツールについても検討を始めた。

 石村氏は、「日常の業務でも、社内のインフラ構築担当部門や、技術評価などを手掛けるチーフテクニカルディレクター(CTD)からアドバイスをもらって業務を進める体制ができていました。Azure移行で冗長化の仕組みが必要になったときも、迷わず相談を持ちかけました」と語る。社内での情報収集を始めながら、会計システムの開発ベンダーにも助言を求めた。複数の冗長化ツールや手法が対象に上った中で、相談した相手から口を揃えて推奨されたのがサイオステクノロジーのデータレプリケーションソフト「DataKeeper」だった。

 「Azureで使うなら、認知度も安定性も高いDataKeeperがいいという声が多くありました。Azureの世界での実績が多いことも推奨の1つの要因でした。ヒアリングをしていくと、イオンアイビスの他の部署でもサイオステクノロジーのDataKeeperHAクラスターソフトのLifeKeeperを使っていることもわかりました」(石村氏)。

 冗長化して可用性を担保する仕組みは、Windows Server標準のファイルレプリケーションサービス(FRS)機能などを駆使すれば自作することもできた。しかし、と石村氏は続ける。

 「構築できたとしても、その後のフォローやサポートをどうするかが運用上の課題になります。一方で、製品化されているツールを使えば、開発会社があり、サポートも提供されていることから、トラブルがあったときの解決の助けになります。それも導入実績やサポートの規模が大きい大手ベンダーの製品ならば、数年後にサポートを受けられなくなるリスクも低くなります。コストなども含めた総合的な判断から、DataKeeperを選択することにしました」。そこで20229月に検証環境のためにDataKeeperを先行して導入した。

 もう1つ、会計システムのAzureへの移行プロジェクトでは課題があった。会計システム部で管理している複数のシステムの中には、DataKeeperの採用を決めたシステムとの依存関係が弱い疎結合のシステムがあり、その1つとしてSAPを利用しているシステムがあった。「SAPのシステムも、冗長化の検討を同時に進めていました。他のシステムと開発ベンダーや移行ベンダーが同じであり、冗長化ツールとしてもDataKeeperに一本化することでトラブルを減らせると考えました」(石村氏)。

 

イオンアイビス様構成イメージ.png

 イオンアイビスは、SAPのシステムにDataKeeperを適用できないかサイオステクノロジーに問い合わせた。するとサイオステクノロジーからの回答は、「SAPで十分に機能を発揮させるなら、DataKeeperではなくLifeKeeperの導入が推奨される」というものだった。LifeKeeperを中心としたデータレプリケーション用のライセンスパッケージ「SIOS Protection Suite Linux v9」を導入し、必要なモジュールを選択することで冗長化を担保する形態である。「SIOS Protection Suite側で設定するだけで、冗長化からデータの維持、切り替えなどをコントロールでき、システムを運用する際の安心感がありました」と石村氏は振り返る。20236月にSIOS Protection Suiteを導入、DataKeeper追加ライセンスも同8月に購入し、Azureでの冗長化体制の構築を進めていった。

「便りのないのは良い便り」と言い切れる安定運用

 当初のプロジェクトの進行とは順番が入れ替わり、SIOS Protection Suiteを採用したSAPのシステムは202310月に稼働を開始、DataKeeperを採用した会計のメインシステムは20245月に移行が完了した。導入作業について石村氏は、「DataKeeperまわりに関してはトラブルがなく、あっさりと設定ができました。稼働上の問題もなかったです」と評価する。

 運用開始後、運用担当者からも特段のコメントが上がってきていないという。「可用性の機能を提供する冗長化製品は、トラブルが起こらないと何かをすることがありません。バックエンドで動いている製品として安定して稼働していて、何もなかったことが喜ばしいと感じています。便りがないのは良い便りですね」(石村氏)。

 実は、会計システムがAzureで稼働してから、2回ほどフェイルオーバーが発生する事態が起きていた。しかし、DataKeeperが想定通りに稼働し、データはきちんと同期されていて、設計通りにリラン(再実行)が行えた。石村氏は、「設計通りにフェイルオーバー時にリラン対応を行うことができました。大規模なシステムなので、リランといっても100200のジョブを再実行しなければならないのですが、切り替え先にデータが同期できているので設計通りに再実行のアクションをするだけで済みました。空気のように稼働しています」と語る。

石村氏はスピーディなサイオステクノロジーのレスポンスにも満足している

 同時に、サイオステクノロジーのサポートに連絡をして、ログデータを提供し調査を依頼した。フェイルオーバーが発生した事象の切り分けをするためだ。「サイオステクノロジーは、同社ができる範囲の調査をしてきちんとした回答を提供してくれました。スピード感のあるやり取りにも満足しています」(石村氏)。調査を進めた結果、フェイルオーバーが発生した原因はDataKeeperとは別のところにあったことも判明した。

 Azureの会計システムにおける可用性の担保は、こうして導入から運用へとフェーズが移った。石村氏は「会計システムのAzure移行は、イオンアイビスの大掛かりなプロジェクトとして実施したものです。ここで得たナレッジは、イオンアイビス全社のナレッジになり横展開していきます」と説明する。今後、他のシステムのAzure移行で可用性の担保の必要性が出てきたときは、「会計システムでDataKeeperを使ったので、これを使うといいのでは」という情報が伝わる。会計システムのAzure移行について、社内外からDataKeeperの推奨があったように、有力候補として推奨されていく形だ。ノウハウやナレッジとしてイオンアイビスの社内でフィードバックされる情報に、DataKeeperLifeKeeperがしっかりと足跡を残す事例が1つ増えたことになる。

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イオンアイビス株式会社様

業種 情報通信業
導入環境 クラウド(Azure)
導入システム 会計システム
所在地
千葉県千葉市美浜区中瀬1-5-1 イオンタワー 12F
設立日
2009年8月21日
従業員数
452名(正社員) 568名(パートタイマー)※2024年2月末
ホームページ
https://www.aeonibs.co.jp/