日本ビジネスシステムズ様(某公共機関) 導入事例

公共機関のシステム可用性にLifeKeeperを導入、サイオステクノロジーとのパートナーシップでスムーズな構築を実現

 日本ビジネスシステムズ(以下、JBS)は、システムインテグレータとして1991年に創業した。マイクロソフトのクラウド製品を中心に、顧客が求める要件をサードパーティ製品と組み合わせて提供することに強みをもち、基盤系のインフラ構築も手掛ける。近年では生成AIを活用したソリューションも提供し、顧客のビジネスを支え続けている。

 そうした中でJBSは、金融業務などを手掛ける公共機関のシステムを更新する案件でJP1やHULFTといったミドルウェアの構築を請け負い、可用性担保のためのクラスター構築にサイオステクノロジーのLifeKeeperを導入した。

 この公共機関とJBSとは2018年ごろから付き合いが始まった。転機が訪れたのは2020年のこと。政府がパスワード付きZIP(PPAP)の廃止に舵を切ったことで、この公共機関でもファイル共有の仕組みが必要になったためだ。

 そこで、Outlook やTeamsと連携してメールアドレスを入力するだけでファイルを送信、収集できるJBSのセキュアファイル転送アプリ「metis fiebie(メティス フィービー)」が導入されたのだ。JBS 公共・サービス事業本部 公共・サービス部 2課 アカウントマネージャーの松永 涼氏は、「この時点ではまだ、お客さまにおける当社の認識はファイル共有サービスのベンダーにとどまっている状況でした」と当時を振り返る。

JBS 公共・サービス事業本部
公共・サービス部 2課 アカウントマネージャー 松永 涼氏

大規模なシステム再構築にミドルウェア部分で参画

 その後、この公共機関では法改正や制度改正に対応する要請から、システムの再構築が不可欠になってきた。システムの中にはホストコンピュータを利用するものも少なくない上に、システム間の連携が取れていなかったり、紙と手作業による業務が多く残っていたりしたためだ。「ICTが進展する中で、公共機関のサービスを受ける国民側にとって紙での申請は使いにくさを指摘する声もありました。国、デジタル庁によるICT化の推進も背景に、現代のICTに対応したシステムへの見直しが具体化し、調達に至りました」(松永氏)。

 公共機関の課題と対応について、大きく4つの軸が提示された。(1)紙からWebへと手続きを変えるオンラインチャネルの構築、(2)郵送処理などからのリードタイム短縮を目指すリアルタイム処理、(3)ペーパーレス、キャッシュレスへの対応、(4)事業継続性やセキュリティの対応強化――である。

 こうした要件の調達に対して、システム再構築の全般の設計は外資系システムインテグレータが請け負い、ミドルウェア構築のインテグレータとしてJBSが参画することになった。その背景には、2つの経緯があった。1つは、JBSと外資系システムインテグレータの公共担当チームが、別省庁の案件で協業した実績があったこと。もう1つは、ファイル共有サービスのmetis fiebieを導入した際の公共機関側の担当者が、今回のシステム再構築の案件のキーパーソンになっていて、「JBSのことも、当時 metis fiebie 案件を担当していた私自身のことも、よく覚えていてくれました」という縁があったこと。これらを通じて、外資系システムインテグレータと共同での提案の機会を得ることになった。

 システム再構築という巨大な案件の中で、JBSが担当した1つがHAクラスターを構築することだった。対象になるのは外部金融機関と連携している5つのシステム。要件は、99.99%(フォーナイン)の可用性を保ちながら、システム停止に対して1時間以内に復旧することである。「公共機関のお客さまのSLA(サービス水準合意)があり、その上で内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)のセキュリティ基準に準拠する必要もあり、それらの確認には苦労しました」(松永氏)。

要件に合致したLifeKeeperとサイオステクノロジーの実績を評価

 JBSがクラスター構成を採るための製品の選択のために社内外をリサーチしたところ、サイオステクノロジーの名前が上がってきた。松永氏は、「サイオステクノロジーは、クラスター製品のLifeKeeperを持っているだけでなく、多くのサードパーティ製品を扱えて、構築の実績も豊富でした。社内からは、営業だけでなく技術側からもサイオステクノロジーを推薦する声があり、採用に向かいました」と語る。

 同社でクラウドソリューション事業本部 ハイブリッドクラウド2部 1グループ シニアエキスパートを務める寺分 敦至氏は、システムエンジニアの立場からこう語る。「サーバーはLinuxが対象でしたが、今回はオンプレミスからクラウドまで構成が多岐にわたっていました。全部同じHAクラスターソフトで対応できることを条件にしたところ、選択肢としてLifeKeeperが残りました」。

JBS クラウドソリューション事業本部
ハイブリッドクラウド2部 1グループ シニアエキスパート
寺分 敦至氏

 LifeKeeperについては、さらに「OSを触ったことがないレベルの人材にも分かりやすいトレーニングメニューの用意があることや、民間の大手のお客さまへのインフラ導入実績があることから、信頼感が得られました」(寺分氏)という評価ポイントもあった。

 一方で、JBSからすると、サイオステクノロジーのサポートを受けつつ、LifeKeeperの導入経験やスキルを蓄積することも狙いの1つだった。

 「マイクロソフト製品の取り扱いが主流ですが、業務系で多く使われるLinux系でもより一層知見を高めていきたい考えもあり、LifeKeeperはナレッジを蓄積していきたい製品でした」(寺分氏)

 外資系システムインテグレータの紹介で、公共機関の顧客に具体案を提案したのが2022年春ごろのこと。2023年初頭に入札があり、2023年6月には契約にこぎつけた。

 導入フェーズでは、公共という特性上、お客さま側から詳細な資料を直接出していただくことが難しいため「自分たちが情報を整理して理解した上で、サイオステクノロジーに要件を伝えることに苦労しましたが、サイオステクノロジーの柔軟な対応に助けられながらプロジェクトを進めていきました」(松永氏)。

 また、事前の試験環境の準備ができないことも、今回の案件の難点だった。「一般的なベンダーだったら当社側に丸投げされるような状況でしたが、サイオステクノロジーは当社がサポートできるところまで徹底的に試験をしてから提供してくれて、二人三脚で進められる安心感がありました」(寺分氏)。

スムーズな構築と自社へのスキル蓄積を両立

そうしたパートナーとしての対応に加えて、サイオステクノロジーの情報提供にも助けられた。「ドキュメントがしっかりしているので、お客さまからの質問に安心して答えられました。構築フェーズではとてもスムーズに作業が進んだと感じています」(寺分氏)。

 この公共機関のクラスター構築の案件では、JBSとしては導入の成功と同時に経験を積むことも重要と考えていた。そのため、本番環境とテスト環境で12セット導入したLifeKeeperのうち、サイオステクノロジーには最初の4セットの構築を依頼し、残りをJBS側で構築するスタイルを採用した。寺分氏は、「長期にわたる大規模案件で台数も多く、その対応をしながら技術力の向上を目指しました。サイオステクノロジー側の実装を確認してから構築できたので、若いエンジニアでも自信を持って取り組むことができ、大きな学びとなりました」と語る。

 松永氏も「プロジェクトそのものは、約5年、64カ月に渡る長期的なものです。構築に2年半、その後の運用保守も任されています。当初から5年後に技術的に対応できなくなるということがないように、エンジニアにサイオステクノロジーが持つ経験やノウハウなどを現場で吸収してもらうことは不可欠でした」という。

 公共機関のプロジェクト全体としては道半ばで、全体のリリースは2025年以降になる。その中でインフラ、ミドルウェアを受け持つJBSの担当分野は大きな山を超えたところ。クラスターの構築はすでに完了し、上位レイヤーのアプリケーションなどの構築に進んでいる。スムーズな構築に、サイオステクノロジーとの関係性が貢献したようだ。

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 実際、サイオステクノロジーとパートナーシップを結んだことについて寺分氏は、「いい関係を作れて、楽しく構築できたと思っています。担当者とのコミュニケーションもスムーズで、豊富なドキュメントにも助けられて、不安なく作業を進められました」と評価する。

 営業の視点から松永氏も「公共機関の案件は民間と比べて規模も額も大きいケースが少なくなく、ソリューションが複雑になりがちです。そうした中で、LifeKeeperなどの自社製品だけでなく、クラウドサービスやソフトウェア、OSS(オープンソースソフトウェア)など複数の製品を取り扱うサイオステクノロジーと協業することの価値を感じています。公共機関ではOSSを採用することが多く、今後の協業のポイントになるかもしれません」と語る。

 JBSは民間を対象としたインテグレーションを多く手掛けてきており「公共機関の案件の実績も認知度も高いとはいえません」と松永氏は謙遜する。とはいえ、民間で得た実績を基盤として、LifeKeeper導入のプロジェクトで得た経験を加えて公共機関の案件へ横展開を目指す。「今後、公共機関でもAIやクラウドの導入がさらに増えるでしょう。古いシステムを使っている公共機関のシステム更改や再構築に、JBSの経験やスキルを生かしていきたいと思います」(松永氏)。

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日本ビジネスシステムズ株式会社様

業種 サービス業
導入環境 クラウド
導入システム 公共機関のシステム
所在地
東京都港区虎ノ門2-6-1 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー20F
設立日
1990年10月4日
従業員数
2,509名(2024年3月31日現在)
ホームページ
https://www.jbs.co.jp/