株式会社デイトナ・インターナショナル様 導入事例
数千万円規模のリスクを防ぐ、データ集配基盤の要DataSpiderを冗長化
豊かなスタイルの楽しみ方を提案するセレクトショップ「FREAK’S STORE」やサステナブルをテーマにしたコンセプトブランド「Firsthand」をはじめ、ファッション・小物雑貨・家具などの企画、製造、販売から海外ブランドの企画、仕入、卸などを手掛けるデイトナ・インターナショナル。リアルの店舗だけでなく、デジタル領域においても事業拡大を続けていて、OMO(Online Merges with Offline)ソリューションの企画・製造・販売などデジタルDX事業を行う子会社「イノベーションスタジオ」を設立。DX戦略を推進することで顧客体験価値の最大化を行っている。
さらにファッションとデジタルの融合にも力を入れ、自社でNFTのプラットフォームを立ち上げたNFTプロジェクト「NFT FREAK」を2024年秋に開始。NFTの販売を始めるなど、幅広い人々の「好き」に寄り添った展開を進めている。
そうしたイノベーションに欠かせないのが、システム基盤。デイトナ・インターナショナルではパッケージ製品を活用していた業務システムを、共通基盤のDaytona Digital Platform(DDP)に移行して内製開発の範囲を広げる取り組みを進めている。自社のシステムはサイボウズのkintoneで独自開発しながら、取引先やクラウドサービスなどの外部システムとはDDPの1つの機能であるデータの集配信基盤を介してやり取りする形態に移行する取り組みである。
システム内製化に伴いデータ集配信基盤の障害に懸念
そうしたシステムの移行について、デイトナ・インターナショナル DX本部システムソリューション部 CORPORATE IT課 課長の濁川裕太氏は、「パッケージソフトのベンダーロックインを避けることを狙いとしてAmazon Web Services(以下、AWS)上に構築するDDPへのシフトを始めました。内製化した社内システムに対して、製造販売などのさまざまなデータを集配信する基盤としてセゾンテクノロジーのノーコード型データ連携ツールのDataSpiderを利用しています。システムをDDPに集約すればするほど、連携するシステムが増え、集配信基盤の重要性が高まっていきます。一方で、DataSpiderによる集配信基盤はシングルポイントになっていて、可用性の担保という面で対策が必要になってきました」と語る。
デイトナ・インターナショナル DX本部 システムソリューション部
CORPORATE IT課 課長 濁川裕太氏
DDPへの機能集約を進める中で、集配信基盤の可用性が不足していることが致命的なトラブルにつながることはなかった。しかし、「これからトラブルが発生しないとは限らないし、もう起きるかもしれないという懸念はありました。対策が不可欠になってきたと考え、検討を始めました」(濁川氏)。
集配信基盤には、各種のシステムやマスタ情報などが連携している。具体的には、(1)マスタ管理基盤と基幹システム、EC、WMS、タグ発行システムなどの各種マスタの連携、(2)商品管理システムとEC関連システム、各種モールなどの商品情報の連携、(3)在庫管理システムと配送業者システムなどの着荷実績の連携、(4)社員情報システムとマスタ管理基盤の社員情報の連携――といった具合だ。オンラインショップだけでなくリアルの店舗やバックオフィス業務にも関わる全社的な基盤であり、トラブルで停止すると大きな影響が出る。
同部 CORPORATE IT課の高橋義知氏は、「集配信基盤のDataSpiderにシステム障害が生じると、様々な影響があります。各種マスタの連携が停止すると、各システムでの商品発注や倉庫出荷、在庫管理を正しく行えなくなります。また、EC関連設定情報が連携できなくなると、ECサイトでは販売してはいけない商品の販売制御の設定データが連携できなくなるなど、ECでは本来購入できない商品がECサイト上で購入可能な状態になるケースが発生する可能性もあります」と語る。
万が一の際には、販売を停止するなどの措置が求められる。データを再連携するリカバリーには、長いと1週間ほどの期間を要する。「季節やキャンペーンの実施状況などでばらつきはありますが、不整合の状態が1日継続したら、数千万円レベルの損害が生じると考えています」と濁川氏が説明するように、ブランドイメージの棄損も考えると経済損失は甚大なものになり、経営に大きなインパクトを与えてしまう。
図1 : システム全体構成イメージ
共通基盤のDaytona Digital Platform(DDP)ほか、集配信基盤は会社の心臓部とも言える部分だという
図2 : DataSpider冗長化構成イメージ
DataSpiderと共同検証している安心感が最大の決め手
DataSpiderを使った集配信基盤はAWS上に構築している。デイトナ・インターナショナルでは、AWS上で稼働するDataSpiderを冗長化するための製品選定を進めた。
「最終的に、2つの製品で検討することになりました。サイオステクノロジーのLifeKeeperと、大手国内ベンダーのクラスタソフトです。私たちが独自に調査した内容と、DataSpiderの提供元であるセゾンテクノロジーからの推薦によって、2製品まで絞り込みました」(高橋氏)。いずれもDataSpiderでの採用実績があることから、候補に残ることになった。
2製品からの選択の決め手になったのは、LifeKeeperがセゾンテクノロジーと共同検証を実施していたことだった。高橋氏は、「集配信基盤は重要な基盤として扱われているだけに、きちんと検証されて安定した製品を使いたいという思いがありました。DataSpiderの提供元のセゾンテクノロジーと検証しているLifeKeeperならば安心して導入できると考えました」と続ける。
デイトナ・インターナショナル DX本部
システムソリューション部
CORPORATE IT課 高橋義知氏
安心感に加えて、LifeKeeperは競合に比べて「価格優位性も強くありました」(濁川氏)というように、コストメリットもあった。安心感とコストメリットの双方で優位に立ったLifeKeeperを選択するのは、デイトナ・インターナショナルにとって自然な流れだった。
デイトナ・インターナショナルでは、LifeKeeperで冗長化した環境への移行を一括では行わなかった。時間はかかっても段階的な移行を採ったのは、ノーコードで作成した基幹システムなどのアプリが100本以上と多く、それらが集配信基盤を利用する業務がまさに基幹業務だったからだ。高橋氏は、「DataSpiderでは、各連携先にどのようにデータ連携するかをノーコードのスクリプトで記述してあります。100本以上のシステムの連携情報を一気に移管し、何か問題があったときには業務へのインパクトが大きいのです。そこで、段階的に冗長化した環境に移管していきました」と語る。
実は、LifeKeeperを導入するに当たって、AWS上のOSのバージョンやDataSpiderのバージョンを最新環境にアップデートする作業も同時に行っていた。バージョンが上がったことで、実際に動かないスクリプトもあり、環境の変化にまつわる問題をクリアしながら移管を進める安全策を採った形だ。
基幹システムの内製化などを手掛ける同部 WEB APPLICATION課でインフラを担当するエンジニアの金子誉万氏は、LifeKeeper導入時にすべてが順調だったわけではないと振り返る。「当初は、仮想IPアドレスを使ってLifeKeeperで切り替える方法を考えていました。しかし、AWS上では仮想IPアドレスが使えず、その対応についての検討に時間がかかってしまいました。それ以外は、順調に導入できたと感じています」。
LifeKeeperの導入を役員に上程したのが2024年7月のこと。段階的な移行を経て、すべてのシステムをLifeKeeperで冗長化したのは2024年11月だった。
LifeKeeperが活躍しない現状が最大の効果
取材した2024年12月時点で、110を超えるノーコードのスクリプトがLifeKeeperによって冗長化されたDataSpiderで稼働している。濁川氏は、導入、稼働後の状況を「LifeKeeperが活躍しないのが一番いい状態です。可能であれば一生動かず、お守りとして活躍してもらえたらいいと思っています」と語る。集配信基盤に何かトラブルが生じたとしても、LifeKeeperによる冗長化で大丈夫だという安心感が、導入効果そのものという考えだ。
金子氏も、「冗長構成を採っていなかったこれまでは、トラブルがあったら24時間365日動かなければならないという危機感がありました。それがLifeKeeperで冗長化されたことで、安心して対応できるようになっています」と続ける。
デイトナ・インターナショナル DX本部
システムソリューション部
WEB APPLICATION課 フルスタックエンジニア 金子誉万氏
サイオスのサポートの迅速さに助けられたことがあるという。「LifeKeeperで問い合わせがあり、サポートに問い合わせたときに、素早いリアクションをもらって助かりました」(金子氏)。実は、サイオスの対応には、導入時点でも評価する点があったという。「LifeKeeperでは非対応のOSを使っていたシステムがあり、サイオスに相談していました。その際、非対応OSにも対応するという前向きの回答をもらいました。結局は非対応OSを使わずに済んだのですが、サイオスの対応には好感を持ちました」(高橋氏)。
濁川氏も、「契約が取れたら、対応が疎かになっていくベンダーがないとは言えません。そうした中で、サイオスは導入完了まで並走してもらえてありがたかったです」と評価する。活躍しないことが一番というLifeKeeperだが、お守りとしてデイトナ・インターナショナルの業務遂行を影で支えていくことになる。
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株式会社デイトナ・インターナショナル様
業種 | その他 |
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導入環境 | クラウド |
導入システム | データ集配信システム |